本の紹介:003 「ビジネスエリートになるための 教養としての投資 」

きままに読書

20181月からスタートした少額投資非課税制度 つみたてNISA を、同年の後半から開始することができたのは、離婚がきっかけでした。

一通りのゴタゴタが沈静化したあとで、私がすぐにやらなければいけないと思ったのが保険に入りなおすこと。きれいな離婚協議ができない形で一旦人生リセットとなり、保険もゼロから選びなおすことになったのですが、お恥ずかしい話、長い間ほんとうに能天気に生きていたため、その時の自分の状況下で、どんな保険が必要で、何が必要でないか、適切な判断ができずに困ってしまいました。

いま私が突然死んでしまったら子どもが最も被害をこうむるというプレッシャーもあり、とりあえず浮かんだのが、有料のファイナンシャルプランナー(以下FP)に相談することでした。無料だと、保険の代理店をしていることの多いFPさんの勧める保険に入らされてしまうと思い、きちんと適切な対価を払って今後の家計管理や保険知識なども教えてもらおうと思いついたのです。ネットで検索すると市内で活動されている数名の方が挙がり、その中のお一人にコンタクトをとりました。

当時の私は、弁護士費用や引っ越しによる初期費用など、かなりまとまったお金が必要だったのですが所持金がほとんどなく、数十万の借金をして新生活をスタート。ありがたいことに仕事だけは常にあったので、必死で自転車操業をしながらなんとか2年ほどで返済し、3年目からようやく貯金ができるようになりました。

さて、まだまだ不安の中で暮らしていた私にFPさんが教えてくださったのは、収入保障保険と私自身の医療保険が必要だということ。結婚時代はあまりよく考えず夫の希望で子どもの共済や学資保険に入っていたのに、それらは不要だと言われ、代わりにつみたてNISAiDeCoを強く勧められました。「投資をするんですか、、、私が?」

最初は知らない用語ばかりで、単語の意味を何度も検索するところからでした。でも、これまで仕事と自分の興味のある世界にしか目を向けてこなかった結果が現在の位置に自分を連れてきたのだと深く反省し、子育てや仕事の合間にお金や経済、家計のファイナンスについて勉強を始めました。やがて、学ぶほどに、収入保障保険と医療保険のみで十分だったこと(独身者は生命保険も不要)、もっというとある程度の貯蓄ができれば医療保険ですら不要なこと、家計相談などのアドバイスをたくさんされている別のFPさんも子どもの保険を積極的には勧めておられず、そもそも日本人の多くがかなりの過保険状態だということも判ってきました。

FPさんには、子どもが高校・大学まで公立で進んだ場合の教育費と家計の試算、高校が私立の場合などいくつかのシミュレーションをしていただいた結果、自分の人生の老年にさしかかる前段階で家計が間違いなく赤字に転落するだろう、という悲しい事実を示されました。(相談から5年経過した現在は、娘の軽度障害の状況からみて高校に行ける可能性すら不透明になっており、もっと先行きのわからない未来になっている)フリーランスでひとり親家庭で、養育費もゼロ、親族に経済的余裕のある者がいない…そりゃあ人生いつ詰んでもおかしくない(笑)。この、確実にやってくる人生後半戦の圧倒的右肩下がりをわずかでも阻止するには、収入を増やす、支出を減らす、投資で増やす、の3本立てを真剣に取り組むしかないことがその時よくわかりました。また、そもそもお金の問題よりも以前に、私に必要なのは、残りの人生を生き抜くための「知恵」「知識」を圧倒的に増やすことだ、ということも理解しました。

大学卒業後、社会人になってからの20年、まともに勉強をしていませんでした。失われた20年などと言われる世代なのですが、自分から失ったものがたくさんあると気づきました。反省とともに手を伸ばしたたくさんの本の中に、奥野一成さんの ビジネスエリートになるための 教養としての投資 がありました。

大学卒業まで学んで身につけた「能力」で食っていけると信じているなら、世の中を甘く見ているということです。(原文)

…真の投資は、資本主義の仕組みを通じて、文明を進歩させる力を持っています。世の中を少しずつ良くする力を持っているのです。その力を行使することは、金銭的に余裕のある先進国の国民としての義務でもあります。(原文)

2024年からつみたてNISAが新NISAに変わります。余裕のなかった私のふところから、文字通り「少額投資」を継続して現在で約5年。最初のスタートは月5,000円ずつで、暮らしに少し余裕が出るようになってからは少しずつ増額。この5年の損益は、つみたてNISAが約98,084円、iDeCoが109,737円(2023年8月現在)、合計207,821円増えました。これは、私の未来の赤字転落日を1~2ヶ月遅らせる程度のものかもしれませんが、学んで踏み出したことから増えた新しい価値。5年目の現在は、日本円をドル交換してドル建ての海外ETF購入も始めました。初めての配当金は1.45ドル。他の方から見ると小さな金額かもしれませんが、私にはとても重みがありました。今の私がちいさな節約を大事にするのも、100円、10円の重みが以前と全く変わり、目が開いたからです。

「投資」で収益をあげることは、脳みそに汗をかくことであって、それは体をつかった労働でお金を得ることと同等に大変なのです。頭を使った労働(投資)であろうと、体を使った労働であろうと、自分以外の誰かのために提供した価値の対価こそが「収益」であり「給料」なのです。そういった気が遠くなるような道のりが、お金を稼ぐには必要なのだということをまず教育の中で教えるべきではないでしょうか。」(原文)

 本は著者との対話だと思います。自分がその対話に耳を傾ける状況が整っていれば、知恵のある方からのありがたいメッセージを受け取れるのが読書の価値だと思います。私は奥野一成さんからビシッと「世の中を甘く見ている」と厳しく語りかけていただけて、本当にありがたかったです。もっと若い頃にこういう本に出会いたかった、もっと自分の身近にこんなことを教えてくれる人がいたらなあと思ってしまいますが、この言葉は今の自分だからこそ響いたのだろうとも思います。これからもっともっと、学んでいこうと思います。そうして10年くらい経ったときにスタートラインに立っている今を振り返り、少しは成長できたよねと笑っていられる自分でいたいと思っています。

2023年8月31日


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