かぼちゃの塩煮

日々のごはん

 

 今日は、かぼちゃの煮物の味付けについて、ついに長年のモヤモヤが解決した、という話です。

 ※レシピまでの前置きがかなり長いので、レシピだけを知りたい方は一気に下にさがって、かぼちゃ写真のところから読んでください。

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 子どもの頃から、かぼちゃの煮物が苦手でした。田舎なので初夏から秋まで、これでもか、というほどかぼちゃが食卓にあがります。

 母の味付けが美味しくないというのではなく、数日に渡って食べてきたかぼちゃがようやく無くなる頃にまた次のかぼちゃが登場し、延々と途切れることがないので次第に見るのも苦痛になってくるのです。物々交換システムが存在する田舎では、かぼちゃ余りが起きる収穫時期になると、通りすがりの挨拶とともにかぼちゃを引き取ることが多い。そうして台所の床には大小様々なかぼちゃが並ぶ。食べても食べても、終わらない。かぼちゃの煮物にあまり良い思い出がありません。

 学生時代に故郷から遠く離れた地方都市で一人暮らしをはじめたとき、近所の古本屋で手にしたのが「はじめての野菜料理」という本でした。当時、カレーと野菜炒めくらいしか作れなかった私は、「この本の料理をすべて1回はやろう」「ここからレパートリーを増やしていこう」と考え、ひとつずつ野菜料理に挑戦し始めました。今から30年前の話です。

 あとからふり返って気づいたことですが、「はじめての肉料理」でも「はじめてのイタリア料理」でもなく、あえて「野菜料理」に目をとめたのは、幼い頃から田舎で新鮮な野菜をいつも食べていた下地があり、それなりの意識が育っていたからだろうと思います。幼少期の食体験が長期間に渡ってその後の食の価値観に影響を及ぼす というのは、全くその通りだと思います。

 さて、その本は、「ロールキャベツ」とか「焼き茄子」という料理名で編集されておらず、「キャベツ」「ダイコン」「ニンジン」という見出しのページ構成になっていて、各野菜の栄養、選び方や保存方法などの簡単な説明があり、その野菜をメインにした料理が紹介されていました。「はじめて」とうたっている割には、きゅうりを豚肉と炒めたり、小松菜をアサリと和えるなど、初心者にはぎょっとするレシピや貧乏一人暮らし学生には手が出せないメニューやも多くて選択ミスだったかもしれないと後で思いましたが、野菜の保存方法や選び方など、基礎情報部分はそれなりに参考になった記憶があります。余談ですが、最近ちらほらとスーパーに並ぶようになった「オカヒジキ」や「ツルムラサキ」といった野菜があることもその本で知り、「いつか食べてみたい」と思っていたので、十数年後にスーパーで初めて手にしたときは「これがあのオカヒジキか!!」と嬉しく思いました。

 その本に載っていたかぼちゃの煮物レシピは忘れてしまいましたが、一般的な醤油や砂糖を使った味付けだったと思います。実際に作ってみたものの、もともとかぼちゃにいい思い出がなく好きでもないことから定番化せず、その後の暮らしでかぼちゃを買うことはほとんどありませんでした。

 料理について、当時から「どうなんだろう」と思っていたのが、煮物の味付け。

 「しょうゆ 大さじ2、砂糖 大さじ2、酒 大さじ2」

 「しょうゆ 大さじ2、砂糖 大さじ1、酒 大さじ2」、あるいは

 「しょうゆ 大さじ1、砂糖 大さじ1、酒 大さじ1、みりん大さじ1」はたまた、

 「しょうゆ 小さじ2分の1、砂糖大さじ3、みりん大さじ2、塩小さじ2分の1」だったり。

 これが、しょうゆの代わりに時々「薄口しょうゆ」や「めんつゆ」に置き換えられたりするだけで、ほぼほぼ、大差ありません。甘さひかえめの料理研究家は砂糖が少なめのレシピを紹介し、お手軽時短料理研究家はめんつゆですべてが解決するという。しかし、冷静に考えると、このかぼちゃのかたまりを食べきるために、しょうゆ や 砂糖が 大さじ2 も必要なんだろうか … これは本当に美味しい食べ方なのか…と当時から疑問でした。

 その後も、有機しょうゆのような美味しい調味料になれば違うのか、有機野菜のかぼちゃを使えば好きになれるのかなど、かぼちゃ嫌いを忘れかける数年おきに試行錯誤してみましたが、どれも自分にとっては今ひとつでした。かぼちゃの煮物に限らず、煮物の味付けの多くが、醤油の濃さを砂糖でおさえていると感じられ、調味料を食材にのせて食べているような料理が多い ような気がして、煮物そのものも大好きになれませんでした。

 あれから30年、インターネットの普及で料理レシピはさらに簡単に手に入る時代になりました。「かぼちゃの煮物 レシピ」と検索 すれば山のように作り方がブログや動画で出てきます。相変わらず、しょうゆ・砂糖・酒やみりんがベースのものばかり。そうして現在の私は、「かぼちゃの煮物は人生から外す」、「かぼちゃは天ぷら用としてし買う」、という結論に至っていました。

 ところが。先日、70代の御婦人(以下、師匠)から、おすそ分けといってかぼちゃの煮物をいただきました。これが今まで食べてきたものと違って、不思議に美味しい。「味付けを教えてください」とすぐに聞きました。

 師匠とはこの春に出会いました。親子ほどの年の差がありますが、お互いの人生の共通点で初対面から話が合い、それ以来、月に一度師匠の食事をいただきにお宅訪問することになりました。人生経験豊富な師匠は、食や健康への意識が高く、知恵の宝庫のような存在で、話をしているとためになることばかり。これは、そんな師匠から教えていただいた、かぼちゃの塩煮レシピを紹介と記録のために、自己流で再現したものです。

かぼちゃの塩煮 

 スーパーで買ってきた、カットかぼちゃ。大きなホールかぼちゃも、半分カットかぼちゃも我が家ではなかなか食べきれないので、細かくカットされたものを買っています。

 一口サイズに切ります。好みですが、ピースを均等に半分に切る、またそれを半分に切る、を数回くり返すとそのうち一口になります。

 親子2人暮らしだと、そもそもこのカットかぼちゃですら食べ切れないので、一部はスライスして、かぼちゃの天ぷら用に冷凍保存しておきます。

 残りのかぼちゃは、皮を下にしてフライパンに置きます(ひっつかないなら、鍋でもよい)。

ここに、水100cc、塩小さじ4分の1 を入れ、火をつけます。

 沸騰したら中火にして、フタをします。

 フライパンとフタのサイズが合っていません。この話題はまた、いつの日か。

 だいたい10分くらいが目安ですが、水の減り具合で時間は調整します。

 油断すると水が無くなります。終了タイムは、かぼちゃの柔らかさで時間は適当に長くしたり縮めたりしてください。ほどよく水分がなくなるのがベストです。

 この料理は要するに、硬い皮の部分を下にして、塩水でかぼちゃを煮る(蒸す)、という超シンプルなもの。

 これだけです。

 師匠によると、かぼちゃ自体が甘いのでさらに甘く煮る必要は無く、塩煮で十分とのこと。かぼちゃの甘みとほんのりとした塩分があり、しょうゆや砂糖で味付けしなくとも、かぼちゃは十分に美味しく食べられる……ずいぶん長くかかりましたが、私にとって、ようやく出会えた納得の味でした。

 シンプルすぎるかぼちゃの塩煮レシピは、どこから生まれたのか。師匠にはさらに人生の師がいたそうで、その昔、「素味(すあじ)を大事にする」ということを指導されたそうです。材料そのものの味を活かそうとすると、究極的にはシンプルに行き着くそうで、「これは生き方においても同じ。欲の足し算ではなく、引き算の生き方がよい」 ということでした。

 料理には、その人の生き方がそのままでるなあ…と思います。

 謙虚で少ない口数から、含蓄のある言葉がさらっと出てくる師匠からもっともっと学びたいと思っている、現在の私です。

今日はこれから、冷凍のスライスかぼちゃを天ぷらにして食べます♪

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