ブログでやりたかったことのひとつが、本の紹介です。誰かに「これ、いいですよ!」と紹介するというよりは、誰かが読んでくれるかもしれない前提で本について書くことで、自分が読んだ本の記憶の定着がアップする、という点に実は最も主眼を置いています。(スミマセン)ついでに誰かのヒントになったら一石二鳥…。
(↑上の写真はフリー素材で、本とは関係ありません)
2023年も半分が過ぎましたが、上半期に読んだ本の中で面白かったのが、こちらです。
「エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来」 古舘恒介著
内容は、人類とエネルギーの歴史をひもときながら、現在の課題点、未来への方向性に示唆を与えてくれる教養書で、幅広く分散している多くの点と点をつなげた深い知識の集積のような本でした。難しいところもたくさんありましたが、分からないところは検索したり、紹介されている本や人物、歴史などについて自分でも調べてみよう、などと思えてくるところがが多く、よい刺激になりました。
飛鳥時代から奈良時代にかけて遷都が20回以上行われたことは学生時代の歴史の授業で何度も耳にしていましたが、度重なる遷都によって畿内の針葉樹と広葉樹がきえて赤松の森が増えたといったことは教科書でも授業でも聞いたことがなく(あるいは私が聞きもらしていただけなのか…)、近世に入って秀吉や家康が巨大城郭を作る時代に入り、大型建築物の柱の本数を減らしたり、ケヤキの木にヒノキの板でかこって柱を作ったという話も驚きました。自分が生まれてから現在までの約50年間で目まぐるしく開発が進んで日本の自然が減少してきたことは肌身に感じていましたが(もっというと高速道路や新幹線が広がった70年ほどか)、この1500年ほどの日本の歴史の変遷の中でも日本人が森林資源をゆっくりと使い倒してきている、それは古い時代からもう始まっていたことなんだな、と。恐らく今後、多くの神社仏閣をみるとき、建築資材の出処(でどころ)やその歴史について興味がわいてくる。一つのことを知り、「なるほど」と理解が深まることで、次の関心につながっていく、これが教養書の効用だと思います。
本の内容すべてがこんな調子。人間は火を使うようになってから加熱調理が増えて胃腸が小さくなり、脳が大きくなったとか、蒸気機関は熱エネルギーから運動エネルギーへの転換をもたらしたとか、火力発電と原子力発電はタービンを回転させるという形態においてエネルギーの生産スタイルは同じものであるなど、今まで考えたこともなかったことをエネルギー視点から見る面白さを知れました。たくさんの知識を蓄積していくことで、ある段階で情報どうしが連携しあって新たな理解が深まるんだなということも感じました。また同時に、たくさんのことを知っていることだけではだめで、知り得たことから自分なりの考えを出せるかどうかが、先のわからない未来を進んでいくための適切な解(たとえ間違っていたとしても)を求めていくために必要なのだとも感じました。
著者の最後の考察の中で、年率2%(森の木の成長率同等)の経済成長ではなく、1%前半のゆるやかな成長に社会が慣れていく必要がある、との記述があり、この点にも共感がいっぱいありました。社会の成長については賛否両論あると思いますが、一個人としてみると、ものすごい速させ進んでいく社会についていくのが今の私にはとても大変で、「これ、頑張って追いかけないといけないのかな」と、焦ってしまう反面、減速した暮らしを実践する人たちが発信するものに共感やあこがれを抱くことが多く、自分はこれからどちらを選んで進めばばいのだろうと思っていたところに貴重な道筋のヒントをいただけたような気がしました。たくさんのキーワード、響いた言葉をこれから日々の暮らしの中でどのように深めていくかが、読み終えたあとの自分の作業になるのだと思います。
「節約とは、元来勤勉と並んで、資本主義を構成する重要な要素」
「節約は……エネルギー消費量の削減に十分な貢献をしていることになる。」
既に3回読み返して、まだまだ読み足りない(頭に入り切らないともいう…)感じなので、恐らく今後も何度も読み返すと思います。
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